(2018年9月)

武蔵丘陵 春   幕内史子

 

うらうらら弥生の空より花便りとどきて出かける武蔵丘陵

明治百年記念事業に造られし武蔵丘陵 森林公園

今を盛りと桜の花は咲きおれど人出ほどほど園内広し

花のもと娘と座りお弁当 正午の鐘がのどか聞こえ来

細枝にうぐいすかぐらの花揺るる薄くれないの小さき花花

時折に春告鳥を聞く丘に土筆・すぎ菜の列なし生ゆる

樹樹の間(ま)に紅の葉は耀いて山桜花たか高と映ゆ

〈うすべにに葉はいちはやく萌えいでて〉牧水の歌を口遊みゆく

腰をかけ双眼鏡に鳥探すかつて鳥追い歩き廻りき

櫟・楢のアップダウンの径つづく古木は空を覆い隠して

鎌倉へ武士(もののふ)たちが馳けゆきし樹間の古道細く続けり

団栗が落ちて殻をば脱ぎ捨てて径辺に並び立ち上りいる

夥しきどんぐり達が芽を出しぬ子を残だんの活力怖く

人影も疎な園内みちの辺にすみれ群れ咲く濃きも薄きも

古池に「誰あれが生徒か先生か」メダカすいすい並んですーい

幼虫は寒さを無事に過したるかオオムラサキの榎木を見上ぐ

池の辺にもうすぐ金らん花咲かすパトロールして仲間と守りき

ゆるり歩き観察会の人たちに鳥・花・蝶など教え貰いき

独り身にかえりし春を廻りくる比企丘陵を娘に支えられ

山ゆり咲き大紫(おおむらさき)の翔ぶ夏に森林公園又たずね来ん