(2018年2月)

教室の三十一文字    加藤健司

今日もまた吾の名前は見つからぬ投稿歌壇にあの人は載る

初夏という響きの中で決断を一字凍結したる日溜り

コーヒーをアイスに変えるファミレスのドリンクバーで初夏をおかわり

プロ野球四月の雨のナイターは吐く息白くベンチに火をおく

普通とは何なのだろうと考えるここは異常と確かにいえる

歯車が一度狂うと直せない直せぬままに坂を転がる

今は唯一人になれる真夜中が幸せであり眠りを削る

副業はインターネットが使えぬとないことを知るそんな世の中

君が詠む大人の矛盾を突く歌に応えられずに唇を噛む

教室の黒板に書く吾の歌の横に書かれた返歌を消せぬ

教室を歌で溢れる場にしたい理想は理想夢は捨てない

思春期の君の心に届く歌四か月目でやっと届きぬ

年齢差四十以上もある君と共有したき三十一文字

エラソウに説教をするセンセーは所詮教師の服を着ている

教科書のページは「短歌」に進みたりチャイムが鳴って五分が過ぎる

「五七五俳句の方が短いぞ」「短歌の方は恋も詠めるぞ」

ハッピーとハッピーエンドは違うもの ドラマの恋に割り切れぬ君

スマホとのつきあい方で左右さる便利なツール・悪魔の玩具(おもちゃ)

本のある暮らしに吾は潤いて今日も活字に寄り添いており

休日の朝昼夜に感謝する呼吸のできぬ平日があり