(2018年10月)

いつか言葉になりますように   川原ゆう子

 

ぺらぺらの平面体で起きてきて朝のいろいろ立体になる

詠うことはやはり私を切りつける生な思いは薄く包んで

短歌誌の巻末の歌おびただしその熱量を途中まで読む

思い直してラップフィルム掛け直す元通りには覆ってやれず

言い過ぎて空気が少し張りつめるあなたは私でないというのに

空き瓶のラベルをはがし置いてゆく肩の形は皆様々で

どうしたって生きにくい世を生きてゆく星のない夜も空を仰いで

畳の目律儀に並び風渡る足の裏がゆっくり触れる

そんなには青くもなくて筋雲が浮かんで空は背景でいる

やせたねと食べているのと故郷に見舞ったはずの母に聞かれる

私がいなくてもいい故郷は黙って聞く事ばかり増えゆく

寄って来た幼きは既に肩越しに我には見えないものを見ている

屋根の向こうに鉄塔が見え雲が見え空は気にしてないように見え

階段の長さに怯み待っている行わなかった記憶のひとつ

言いっぱなし言葉足らずと思うとき球体の中をぐるぐる回る

なでしこがぽつりぽつりと今朝も咲くこのビロードを覚えておくね

閉じたドア開けてもらってバスの中気恥ずかしさと右折してゆく

失敗を重ねてしまう夢覚める息整えて畳んで寄せて

磨かずにドサリと感情置いておくいつか言葉になりますように

間違ってしまったけれど眠りますどうぞ優しい明日をください