(2018年6月)

芽吹き   田中洋子

 

仁淀川の岸辺の柳芽吹く頃川の流れは春のかがやき

樹齢など誰も知らない大木は子どもを遊ばせ大人憩ひぬ

途中より二つに分れ枝を張り川面に広くその影写す

しだれもせず幹たくましく風格あり蝉を鳴かせて児らを誘ひぬ

台風をしつかり受けとめ集落の家々守りどつしり根をはる

一本の大樹でありしが年を経て小さき柳並びて育つ

源流は石鎚山系といふ仁淀川大小の谷の水を集めて

高知県八十四パーセントは森林とぞ水を蓄へ森を育てる

原生林の橅の芽吹きの美しさ紅葉の季よりはるかに勝れり

橅の木は山に降る雨受けとめて豊かな地下水貯へてゐむ

プールなどまだ無き時代昭和初期子どもらみんな泳ぎは川で

子どもらの川あそびの横を帆掛け船上流へと上りてゐたり

その舟が夜ともなれば鵜飼舟 松明ともし川を下れり

夕涼みの縁台で眺めし鵜飼舟松明の灯(あかり)いまも胸中

仁淀川は時には荒れておそろしき台風上陸で千ミリの雨

濁流の川はあふれて国道まで床上浸水・床下浸水

川近く低地にある家洪水に家具を二階まで運び上げゐる

仁淀川大河でもなき川なれど人は親しみありがたき川

紙工場の排水検査きびしくて薬品まじる液流すことできず

「仁淀ブルー」といふ言葉あり上流の流れこそその色美しき青